押し紙問題が国会(質問主意書)へ ?第三種郵便物と選挙報道?
国会には国会議員が内閣に対し文書にて質問する「質問主意書」があります。質問の内容及び回答は衆参議員のHPにて閲覧できるのですが、非常に幅の広い質問が上がっています。中には質問しまくって出版してしまう議員や、[空港のマッサージチェアに関する質問主意書]という、質問の趣旨が不明なもの(質問した議員さん、道路財源でマッサージチェアーを買った件とごっちゃにしているのか?)もあるのですが、先日こんな質問がありました。
質問書によれば、日本ABC協会(新聞・雑誌の部数公査機構)の調査で、新聞社から新聞販売店に届く配送部数と実際の配達部数が大きく異なる例が多く見つかった(いわゆる「押し紙」)ため、ABC協会が来年から調査の厳格化をするとの一部報道(推測ですが、2009/6の週刊新潮での連載記事ですね)を受け、
- 「押し紙」行為を右のように定義した場合、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第十九条(不公正な取引方法(第二条第九項)の禁止)及び公正取引委員会告示「不公正な取引方法」第十四項(優越的地位の濫用)等に抵触しうるか。
- 一九五八年以降、これまでに新聞各社の「押し紙」行為が公正取引委員会の指導、調査等の対象となったことがあるか。
- 経済産業省としては、通商産業省の時期も含め、これまでに新聞各社の「押し紙」行為を把握したことがあるか。あるとすれば、新聞各社またはABCに対し行政指導等を行ったことがあるか。
という質問をしています。それに対し、
- 御指摘の「「押し紙」行為」が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第九項の規定に基づき公正取引委員会が指定する、新聞業における特定の不公正な取引方法(平成十一年公正取引委員会告示第九号)第三項又は不公正な取引方法(昭和五十七年公正取引委員会告 示第十五号)第十四項に規定する不公正な取引方法に該当する場合には、同法第十九条の規定に違反することとなる。
- 公正取引委員会においては、株式会社北國新聞社に対し、その取引先新聞販売業者に同社が定める目標部数を提示してほぼその部数で取引することにより、当該新聞販売業者が実際に販売している部数に正常な商慣習に照らして適当と認められる予備紙等を加えた注文部数を超えてその日刊新聞を供給するという行為を行っていたものとして、平成十年二月十八日に、当該行為の取りやめ等を命じる審決を行った。
- 経済産業省及び旧通商産業省が、社団法人日本エービーシー協会から、御指摘の「新聞各社の「押し紙」行為」を把握したとの報告を受けたことはない。
という返答をしています。
つまり、内閣が「押し紙」は独占禁止法違反だと明確に返答しており、これは今後新聞社や新聞経営のあり方に対しかなりな影響力があるのでは?と思います。
以下、私の推測ですが、印刷部数と実際の配送部数とが大きく異なる「押し紙」というのは、独占禁止法違反以外にも”新聞が選挙報道が出来るか”?という大きな問題を抱えています。
・新聞と第三種郵便
新聞や雑誌には、その表紙なり1面に「第三種郵便物認可」とあります。これは、
>「国民文化の普及・向上のために、郵政公社の認可を受けた新聞・雑誌等の定期刊行物を内容とする郵便物を割安な料金で取り扱う」郵便制度
だそうです(ためになる郵便ページより)。そのおかげで地方紙や雑誌を郵送でおくって頂く際の送料が安く済む利点があります。
では、誰でも「第三種郵便物認可」が取れるか?と言えば、かなり厳しいようで、承認条件があるそうです。主なものを抜粋すると・・・
- 毎年4回以上、号を追って定期に発行するものであること。
- 掲載事項の性質上発行の終期を予定し得ないものであること。
- 政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又は論議することを目的とし、あまねく発売されるものであること。
- 1回の発行部数が500部以上であること。
- 1回の発行部数に占める発売部数の割合が8割以上であること。
というかなり厳しい条件があります。なので、急ごしらえで新聞を発行し、それで第三種郵便物の認可を得ることは出来ません。
・第三種郵便と公職選挙法
公職選挙法には「新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由」が認められており、新聞は選挙期間中でも選挙報道が出来ます。ただし、そのためには下記の条件を設けています。
- イ 新聞紙にあつては毎月3回以上、雑誌にあつては毎月1回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであること。
- ロ 第3種郵便物の承認のあるものであること。
- ハ 当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前1年(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にあつては、6月)以来、イ及びロに該当し、引き続き発行するものであること。
実は、2005年4月に「みんなの滋賀新聞」が発刊となりましたが、わずか5ヶ月で休刊となりました。販売網や購読者の確保など新規に新聞社を立ち上げる難しさもあったものの、「みんなの滋賀新聞」では第三種郵便物の認可が得られておらず、また、発行実績が6ヶ月に満たなかったため、9月11日に投票された衆議院選挙の選挙報道が一切出来ない紙面構成を強いられました。
参考:「みんなの滋賀新聞」選挙報道を休止 公選法の壁厚く(朝日新聞web)
当時「みんなの滋賀新聞」を郵送にて購読申込をしましたが、第三種郵便物認可が無かったためメール便で届き、また選挙の話題がなくかなりローカルなものばかりで、事情を知らない私は驚きました。余談ですが、新幹線新駅の反対の動きを伝える記事が多かった記憶があります。
・押し紙が多いと選挙報道が出来ない?
さて、選挙報道の為には「第三種郵便物認可」が必要な訳ですが、その規定にある「1回の発行部数に占める発売部数の割合が8割以上であること。」が気になります。今回の質問主意書に関し、質問のベースにしたであろうと思われる週刊誌の記事では、3割の新聞が配達されなかった実例を示しています(『週刊新潮』2009.6.18)。この場合、上記の規定に満たない為「第三種郵便物認可」の規定に当てはまらない可能性もあります。
ただ、販売部数を新聞社から販売所に有償で卸した部数とすればこのズレは生じませんが、そのズレがいわゆる「押し紙」であるならば違反であると今回の主意書では示しているので、販売部数の根拠が無くなってしまうため、その数値を元にした「第三種郵便物認可」自体も根拠が無くなってしまいます。
となると、押し紙問題がある限り、選挙報道が出来ない可能性も・・・
以上、国会の質問に出ていたので推測を付け加えてみました。




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